Vanity of vanities

Kei Koba in CER, Kyoto University, Japan

老害 version X

Nさんが、ようやくご自身のサンプルを測定できた。プロジェクトの大量のサンプルをハンドリングしているとはいえ、自分のサンプルをやるチャンスはなかったのだ。

 

こば自身は「そんなのもうやり尽くしているし、面白くないデータにしかならないよ~」と思っていたが、出てきたデータは、かなり意外なものだった。もう一度データの洗い直しをしなきゃいけないけど、へーふーん、そー、って、解釈できるけど、そういう解釈は考えてなかったな、、という結果が出てきた。測定に参加してくれているAさんをすぐ呼んで3人で、おおお、と話、Nさんはラボに戻ってすぐにTさんに見せたとのことでTさんから「Nさん興奮してました」、そして今後どうしましょう、というメイルが来た。

 

好ましい。

 

いくつか要素がある

 

Nさんが雇用されているプロジェクトのRAとして測定技術をきっちり学んだこと

サンプルを測定するWSに積極的に参加したこと、そこでいろいろ学んだことを生かして周りの人をリードした結果、余剰が生まれて、自分のサンプルを多く(試しだけど)測定できたこと

それ以前の濃度データなどがちゃんと出ていること。また自分のサンプル、サンプリング地点に対してきちんと知識が得られているだけでなく、ぱっとGISなどで見せられるように準備できていること

データを渡したらすぐにグラフがかけるような準備ができていて、15分開いたから、というときにぱっと反応できる状態であること

なによりも、そのデータがどれだけ価値があるかということを、既存研究で分かっていること分かっていないことがある程度(完璧ではないにしろ)明確になっていること

などなど。準備ができていて始めて価値は得られる。当然のことだと改めて思うとともに、最初の自分の老害、つまり決めつけてしまう(ステレオタイプは必須とは言え)ことの反省もある。

 

これら一つ一つの素要素は、その素要素だけ取り出して、効率、タイパ的なものを最優先していてたら身についていない可能性が高い。ただ、知識・能力はあるところまではひたすら低空飛行な、地道な蓄積で、ある点から爆発的に連関がつながり有機的に発展することは誰もが知っている知識であり、なんとなれば日本であれば受験勉強である程度経験しているはずのことなのだ。

 

しかし、これは、低空飛行を続けた人だけが到達できる転回点で、低空飛行がどこまで長く続くかは誰も分からない。まさにGRITがここで試されるわけで、教員としては、低空飛行の先に必ず転回点があるのだ、と言い続けるしかない。そこは信じてもらうしかない。ただ、その場合、低空飛行の質は注意しなければならないし、信じてもらえるだけの信頼関係が作れているかも大変注意しなければならない。今自分はこの2つとも大変よろしくない。

 

 

 

 

本拠地はこちら http://www.ecology.kyoto-u.ac.jp/~keikoba/