Vanity of vanities

Kei Koba in CER, Kyoto University, Japan

平易な言葉の重さ

「みなか先生と一緒に統計学の王国を歩いてみよう」
https://www.yodosha.co.jp/jikkenigaku/book/9784758120586/

読了。買ってすぐ学生部屋に渡してしまったが我慢できずに取り返して読んでみた。


細かいところに落ち込むことなく,俯瞰的に,または網羅的に統計の考え方というか見通しを提供してくれているという点で,是非,うちにくる学生さんには早めに一読してもらって「わかった」ではないにしろ,「わかりそう」という気持ちになってもらいたい一冊だと思う。


ただ,僕自身はそんなにさっと読めるわけではなかった。読みにくいというのでは全くなく,むしろ,平易に書かれている文章の裏で,どれだけの言葉の取捨選択があったんだろうということに思いをはせることが多かったのである。


特にアブダクションのところ。演繹,帰納,という言葉に対して,中学高校で国語の先生が口ごもっていた記憶とともに,やっぱり一発ではわからないなぁ,という反応が頭の中で始まっていることを感じつつ,ついにアブダクションという言葉が出てくる。この本,ほんの一部でしかないかもしれないけれども,アブダクションというものを勉強するのに,とても平易かつ重みのある言葉が並んでいる,というのが,僕のこの本への印象だし,今後もそうやって学生に紹介してゆくのだと思う。アブダクションについては難しい本がたくさんあって,僕自身もほとんど読めていないけれど,常にこの本に書かれている言葉に立ち返ると,難しい本をなんとか踏破できてゆくような気になった。


アブダクションの要点は,選び出された”ベスト”の仮説が必ずしも最終的な”真実”である必要はないということです。』(p 53より)


授業において限定合理性という言葉をとにかく強調してしまう(さらに可能であれば,ポパー反証可能性を自分の言葉で授業で話してみたいのだけれど)自分にとっては,本当に,ちょっと背伸びした形で腑に落ちる,そんな本だったので,防備録として書いてみた。


I may be wrong and you may be right, and by an effort, we may get nearer to the truth.

本拠地はこちら http://www.ecology.kyoto-u.ac.jp/~keikoba/