Vanity of vanities

Kei Koba in CER, Kyoto University, Japan

リンは何処(いずこ)へ?−リン循環研究の現在と将来展望−

平成25年度 京都大学生態学研究センター公募研究集会
「リンは何処(いずこ)へ?−リン循環研究の現在と将来展望−」

開催日時:2013年11月17日(日) 14:00-18:00
開催場所:京都大学農学部 総合館 W106(開場13:00)

講演プログラム(各講演時間は質疑含め30分)
1)趣旨説明 (小野寺真一・広島大院・総合科学)
2)熱帯降雨林生態系をモデルとした陸域生態系のリン循環の特徴(北山兼弘・京大・農)
3)河川生態系のリン循環 (岩田智也・山梨大・医工総合)
4)地下水中のリン濃度分布におけるホットスポット (小野寺真一・広島大院・総合科学)
5)沿岸域生態系のリン循環と生物応答 (梅澤有・長崎大・水産)
6)貧栄養海域のリン循環と解析手法 (鈴村昌弘・産総研
7)リン循環を捉える新しいツール:リン酸‐酸素安定同位体 (奥田昇・京大・生態研))
8)総合討論(30分程度)

開催趣旨:
生命の必須元素であるリンは、情報因子(DNA)、エネルギー源(ATP)、物質生産場(RNA)、細胞骨格(リン脂質)などの主成分として、物質代謝の重要な機能を担う。また、リンは生物に利用可能な形態での存在量が希少である故、生態系の物質循環を支配する律速因子ともなりうる。この生化学特性のため、人間活動に伴うリン循環の攪乱は、一方で富栄養化などの環境汚染をもたらし、他方でリンの消費・拡散による将来的な資源枯渇と生産性低下の危険性を孕む。したがって、リン循環の解明は、地球環境問題の解決に資する研究課題と位置づけられる。しかし、リンはその化学形態の複雑性ゆえ、分離・同定に高度な技術を必要とし、安定同位体が存在しないため、炭素や窒素などの物質循環に比べると、あまり理解が深化していないのが現状である。

本研究集会では、様々な生態系におけるリン循環研究の事例を紹介し、システム特異的なリン挙動を捉えるための方法論を総説し、森林土壌学、陸水学、水文学、海洋学安定同位体学など異分野の知を結集することにより、リン循環研究の統合を目指す。それぞれのシステムで得られた知見を紡ぎ合わせることによって、母岩から溶脱したリンのたどる運命、すなわち、森林土壌内部の植物による取込みと微生物による不動化過程、河川や地下水に浸出したリンのダイナミックな生物−化学相互作用と運搬過程、沿岸に流出したリンが生物活性を高める生産過程、そして、最終的に外洋に散逸した極微量リンがナノスケールで微生物に代謝される生化学過程、これらのリン循環プロセスを広角的に俯瞰したい。

お問い合わせ先:奥田昇(nokuda(AT)ecology.kyoto-u.ac.jp)

本拠地はこちら http://www.ecology.kyoto-u.ac.jp/~keikoba/