Vanity of vanities

Kei Koba in CER, Kyoto University, Japan

ふっと空気を密にして取り出してくれる:「ちょっと踊ったりすぐにかけだす」(古賀及子著)

「ちょっと踊ったりすぐにかけだす」(古賀及子著)を読む年末年始。

 

soryusha.co.jp

年末の「本とこラジオ」を聞いていた幸せな時間の中で、鳥羽和久さんが今年の一冊に挙げていらっしゃったので早速読みながら年を越した。

 

e-mailが開通したのが結構遅くて、D1の頃、25才のころだから、1996年ごろか。そのあとwebを読むようになり、テキストサイトを読みまくっていた。あの頃、htmlを手打ちしながら、そんな面倒なことをしながらも文章を読ませてくれていた方たちがいて、彼らの文の力は圧倒的だった。今でも、何人かの方が書き続けてくれている。しんどいときに、ふと思い出して検索しては読んで、ちょっと心によい重みが戻ってくる。デイリーポータルZは、その一部の書き手の皆さんの、結集体みたいなものだったりする。なので、なんというか、絶対的な信頼があったりするのだけれども。まぁ、そんなことはどうでもいいのです。「心によい重みが戻る」という表現は悪くないなって自分で思った、というだけの段落です笑。

 

とにかく「日常」の切り取り方が素晴らしい。と頭に言葉が浮かんだけれども、この「日常の切り取り方」という言葉は、もう使い尽くしたし、ちょっとちがう。違うと考える、その一呼吸を今は置くことができた。そうじゃなくて、ふっと渡る風をさっとさぐって指の股に流れる空気を見つけるみたいな、日常に流れる時間や空気をほんのちょっと優しく圧縮して言葉にしている、そんな感じ。その感じに本当にほっこりしつつ、すごいな、すばらしい、最高だ、とブツブツ言いながら読み進めていた。

 

年末も年始もなく、所属している部局(普通の会社でいったら子会社の中の部署みたいなところか)の評価のための資料をただひたすら作っていて、大事な仕事で集中しなければならないのだけれど、同時に起こる大変な出来事たちにもういっぱいいっぱいで、この本に逃げさせてもらっていた。本当にありがたい。丁寧な時間の流し方を毎日毎日考えなきゃなと改めて思わせてもらえた。新刊がむちゃくちゃ楽しみだ。

 

「日常」の大切さを、そのかけがえのなさを、いろいろに感じる年始です。皆さん、本年もよろしくお願いいたします。

 

 

本拠地はこちら http://www.ecology.kyoto-u.ac.jp/~keikoba/